n00   そこには、お城があって、にぎやかな街があって、魔  法使いがいて、そしていたずら好きの仲良し4人組がい  ました。ある日その4人は街のはずれにある大人達に  「けっして行ってはいけない。」と言われた町はずれの  屋敷に探検に行くことにしました。   その夜は満月がとてもきれいでした。しかしあたりは  生き物がいないかのように静かです。風だけがときたま  ビュー、ビュー、と音をたてます。  ―――ちょっと怖い。   そう思いながらも誰かが作った魔法の火をたよりにわ  くわくしながら4人はその屋敷の扉を開けました。    ぎぃぃ―――  あっけなく開いた扉の向こうはほこりとくもの巣だらけ。  その中を掻き分けるように進みました。   どれくらい時間がたったでしょうか、いろんな場所を  回っても面白そうなものは何一つ見当たりません。   やがて探検にあきた1人が言いました。  「なんにもないね。帰ろうよ。」   残りの3人はうなずき、帰ろうとしたその時、  「あ、なにかあるわ。」   そこには大きくて頑丈そうな箱が一つありました。み  んなは期待を胸にひめてかけより、そしてそこらへんに  落ちてた石で無理やりかぎをこじ開けました。 END n01  ―――しかし中身は真っ暗闇。   がっかりしてふたを閉じようとしたとき、  「待て。」   箱の中からか声がします。  「私をここから出してくれたのは君達か。」 END n02   そして暗闇の中からぎょろりとした目が浮かび上がり  ました。4人はびっくりしましたが、声の主はかまわず  続けました。  「ならば礼をしなくてはならんな。まずは命の保証だ。  私はこれからこの国を滅ぼさなくてはいけない。しかし  君達は見逃してやろう。」  「なにをわけのわかんないこと言ってるんだ。またこの  ふたを閉めちゃうぞ。」  「そうだそうだ。」   4人が騒ぎ出すと、その目は  「せっかく礼を言ってるというのに。ならば君達は人形  になるがいい。」 END n03   パチンと音がしたと思うと4人は何かの光につつまれ、  4人はそれぞれ騎士、冒険家、ピエロ、僧侶の格好の小  さな小さな人形になってしまいました。  「これで私の力が分かっただろう。本当にただの人形に  することもできるのだが、自由に動けるようにはしてお  いた。しかし申し訳ないが私のことを他の誰かに知られ  ると大変都合が悪い。したがって君達が動いているとこ  ろやしゃべっているのを人が目撃した場合ただちに本当  の人形になってもらう。私のちからをもってすれば10  日もあれば十分この国を滅ぼせる。おっと長話がすぎた  ようだ。私はこれから城の方にようがあるのでこれで。  どうしてももとに戻して欲しかったら私に会いに来るが  いい。」   そう言うと黒い塊は宙に舞い上がり、霧のようにふっ  と消えてしまいました。この国が滅びるまであと10日。  4人はとりあえず街に戻ることにしました。 END n04   こうして4人は洋服屋の子供に拾われました。   ―――その夜  「ねえ、ママ。お人形を拾ったんだ。なにかお洋服を作  ってあげて。」  「あらかわいいお人形さんね。でもごめんね。今針をな  くしちゃってるの。だからすぐ作れないわ。」  「えー。」  「ごめんね。でもへんねぇ。さっきまでここにおいとい  たはずなんだけど、、、、。かわりにお話してあげる。」  「ほんと!!」  「ええ、ほんとうよ。昔々あるところにローラという名  前のお姫さまが幸せに暮らしていました.しかし悪い魔  法使いに魔法をかけられて不治の病に倒れてしまいまし  た。」  「じゃあそのお姫さまは死んじゃったの?」  「そこにレオンという名前の勇気ある青年があらわれて、  、、、。」   はなしはその青年が魔法使いを倒し、薬を手に入れた  ところまでながれていきました。  「そしてその薬でお姫さまは病気がなおったの。」  「へー、そうなんだ。」  「さ、今日はおそいからもう寝なさい。続きはまた明日。」  「うん、お休みーー。」 END n05   みんなが寝静まったころ、4人は壁のほうからちょろ  ちょろと動き回ってるような音を聞きました。4人は話  し合ったすえその音のするほうへ近寄ってみることにし  ました。   どうやらかべには穴があるようです。といってもいま  の4人がくぐれる程度の大きさ。おそるおそるのぞきこ  むと、、、、。   チュ―チュ―!!  なにかが襲いかかってきました。 END n06   なんとかねずみの群れを追い払った4人は穴の奥に小  さくて光ってる物を見つけました。  「あ、これ針じゃない!?。」  「しぃー、誰かが起きたらどうするんだよ。」  「ごめんなさい。」  「とりあえず家の人に見つかりやすいとこに置いときま  しょう。」  ――――次の日  「ママ、おはよう。あ!?ママ、こんなとこに針がある  よ。」  「あらほんと。へんねぇ。ここにおいといた記憶はない  んだけど、、、。まあいいわ、お人形さんにお洋服作っ  たげる。」  「うわぁーい。」   こうして4人は新しいきれいな服を作ってもらいまし  た。しかし、いつまでもこの家にとどまるわけにはいき  ません。一刻も早くお城に行ったあの箱の中にいた者の  ところに行かなくてはいけません。   4人その日の夜に抜け出すことにしました。 END n07   ここはお姫さまの部屋。一通り人形遊びを終えて寝よ  うとするころ。  「ねえばあや、あのお話の続きをして。」  「はいはい。確かローラ姫がレオンという青年のおかげ  で助かったところまで話しましたね。」  「うん。それでどうなったの?」  「そのあと、その二人は恋に落ちて王様はこの二人を結  婚させようと思ったの。」  「まあ素敵。」  「でも、その時の大臣がそれを妬んで、その青年の悪い  噂を広めたの。」  「ひどい!! でもその大臣もこらしめたのでしょ?」  「いいえ、結局はその青年は牢に入れられ、そのあと魔  法で魔物の姿にされて箱の中に閉じ込められたそうよ。」  「そんなのってない!!」  「お姫さまも嘆き悲しんだあげく、自分に魔法をかけて  魔物になってお城を出て行ったそうよ。」  「かわいそう、、、。」  「さあ、この話はこれでおしまい。もう寝なさい。」 END n08   警備の兵士の足音が少なくなったころを見計らって、  4人はお姫さまの部屋を抜け出しました。もしかしたら  こんな姿にさせた人物に会えるかもしれないと思ったか  らです。   玉座のある部屋にたどり着きました。するとボブの体  が突然光だし、みるみる人間の姿に戻っていきます。  「あれえ、どうしてもとに戻ったんだろ.」   みんながボブのそばに駆け寄ろうとしました。しかし、  「あ、しまった!!」   とさけんでも後の祭、3人は本当のただの人形になっ  てしまいました。そしてボブもまた人形に戻ってしまい  ました。  「君達には教える必要はないと思っていたんだが、じつ  は君達を見た人間もまた人形になってしまうのだよ。」   と、ボブの背後から聞いたことのある声がしました。 END n15   振り返ると例の人物、というより魔物がいました。  「やれやれ、君達はせっかくのチャンスを無駄にしたの  だよ。まあこうなるだろうとは思っていたが。」  「やい!みんなをもとにもどせ!!」  「残念ながらチャンスは一度だけだ。もっとも私が閉じ  込められたころに比べて魔法の技術もかなりあがってる  ようだ。町に戻れば君達を治せる者がいるかもしれない。  おっともう一つ方法がある。私を倒すことだ。」 END n09  「盗んだ宝石は4つ、拾った人形も4つ、ちょうどぴっ  たりだ。」   と、泥棒はボブ達の服の中に宝石をそれぞれ一つずつ  埋め込みました。  「おしっ、こんなかに隠しときゃあぜっていに見つかり  っこねえ。でも一応はほとぼりがさめるまでここでじっ  としてるか。もっともこの人形どもが逃げ出したらそう  いうわにもいかねえがな。」   と、泥棒はガッハッハッ!!と下品な笑い声をあげま  した。  「さ、もう寝るべ。」   今度は外に聞こえるくらいの大きないびきをかきはじ  めました。   ボブは耳をふさぎながらその隠れ家を抜け出しました。  みんなを助けることのできる人を探すために。 END n10  「お人形ちゃん、今度はいなくならないでね。」   いつものようにガッハッハッ!!と下品な笑い声をあ  げました。  「さ、もう寝るべ。」   と、大きないびきをかきはじめました。ころあいを見  計らって、ボブは3人に「神の奇跡」と呼ばれる呪文を  となえました。すると、みんなに埋め込まれてた宝石が  光だし、のこり3人が動けるようになりました。  「さあ、ここを出よう。」   4人は耳をふさぎながらその隠れ家を抜け出しました。  もとの人間の姿に戻るために。 END n11   誰もいなくなったお城の中を4人は玉座の部屋まで走  っていきました。  「やい、僕達を元に戻せ!!」  「街の人達はどうなったの?」   すると、やはり、例の声がきこえてきました。  「チャンスは一度だけと言ったはずだが。それにこの国  の者たちは君達を残してみんな私が殺した。」   もっとも恐れていた返事が返ってきました。  「おまえをやっつけてやる。今度はこの石があるから負  けないぞ。」   と、四人は身構えました。まものはその人形が持って  いる石を見て、驚いたように言いました。  「そうか!君達がその石をもっていたのか。その石はこ  の国の王家につたわる貴重な石でどんな呪いも解くこと  ができる。かつて私がさる魔法使いから奪ったものだ。  それさえあれば私はもとの人間にもどれる。そう私はも  ともと人間なのだよ。名前は、、、そうだ、確かレオン  だったはずだ。300年も呼ばれていなかったからもう  すこしで忘れるところだった。今にしてみれば姫を助け  てまさかこのような仕打ちをうけるとは思ってなかった。  君達には申し訳ないがやはり死んでもらおう。この国を  滅ぼした今、このかっこうでは他の国に赴いた時にどう  も具合が悪い。さあ、その石を渡してもらおう。」 END n12  「な、なぜだ、、く、まだ死ぬわけにはいかぬ。あの  物語をこのような結末で終わってはいかんのだ。私の  ためにも、愛するローラ姫のためにも、、、。そして  、、、、この話は傲慢な貴族達への戒めの話として終  わらなくてはいけないのだ。」   と、レオンは最後の力を振り絞って呪文を唱え始め  ました。  「ならば、私の体まで朽ち果ててしまうであろうこの  禁断魔法で、、、。」   すると、レオンの上から光が包み込むようにさしこ  み、誰かが手を差し出してきました。  「レオン。」  柔らかくそして優しい声。  「そ,その声は,,,ローラ姫!!」 END n13   優しい声がかたりかけます。  「さあ、これで終わりにしましょう。もう、気がすん  だでしょう。これ以上人を殺せばあなたは私と一緒に  天国へ行けなくなるわ。」  「何を言う。私はもうすでに大勢の人間を殺している  のだ。私はもうあなたとは、、、ともに行けるわけが  ない。」   するとローラ姫はにっこりと笑い、  「行けるわ。だってあなたは、、、、私を300年も  の間愛し続けてくれたのですから。さあこの話をあな  たの考えていたのとは別の形で終わらせましょう。」   レオンをつつむ光はよりいっそう輝き出し、そして  ローラ姫と手をつないで空へと高く高く上っていきま  した。 END n14   その後、その国の人達や人形にされた4人がどうな  ったかは誰も知りません。他の国にとっては今までに  伝わっていたお話の結末が少しだけ変わった程度。   時計も人の都合などまったく気にせずに規則正しく  時を刻み続けます。   また、いつの時代になってもいたずら好きの子供が  いるということも変わらないようです。  「ねえねえ、あそこの屋敷なんかすごくない?」  「結構おもしろそうだよね。今度探検してみる?」  「行きたい行きたい!!」  「じゃあ、、、今夜あたりにでも行きましょ。」                        おわり END n22   そのおばあさんはボブを誰もいないとこに持っていき  ました。そしてなにかぶつぶつと、となえたあと、ボブ  に向かってしゃべりだしました。  「さあ、もう動き出していいぞ。おまえがただの人形で  はないことくらいわかっておるよ。」   ボブはどうしようか迷いました。というのも呪いのこ  とが気になったからです。  「さっき呪いに対して効果のある呪文を唱えたからあた  しは大丈夫だよ。いっひっひっひっ。」   さんざん迷ったあげくボブはしゃべることにしました。  「じつは、、、。」   呪文のおかげなのでしょうか?まじょはまったく呪い  にかからず淡々と聞いています。  「なるほどね、まだそんな災難にあってる子達がいるに  かい?」  「うん、でもどうしたら、、、。」  するとまじょはにっこり笑い、  「おまえさんは運がいい。その服の中に埋め込んである  宝石があるじゃろ。」  「これ?」  「それがあればどんな呪いでも解くことができる。それ  は魔法の宝石なんじゃよ。」  「ほんと?」  「それ一つでは、あまりたいした効果は得られんが、あ  と3つくらいあればとくことができる。」  「やったぁー!!。」  「どこで手に入れたか知らんが呪文を教えてやるからみ  んなで一緒においで。おまえさんの魔力ならその3人の  呪いもある程度解くことができるだろうから。」   と、ボブに「神の奇跡」という呪文を教えました。  「これを使えば動けなくなった友達も動けるようにはな  る。そしたらまたおいで。もとの人間に戻してやるから。」   と、いうとそのまじょは風のように消えてしまいまし  た。   ボブはまじょの言うとおり泥棒ののもとに戻ることに  しました。 END n16  「いっひっひっ、宝石を持ってきたようだね。」  「うん、これがあれば治るの?」   するとまじょはいきなり大きな声で笑い出しました。  「あひゃひゃひゃ、そんな強力な呪い、あたしの力やそ  の宝石の力を使っても解けやしないよ。あたしがその呪  いにかからないのはね、、、。」   まじょの目が一瞬キランと光りました。そして手が少  しずつからすのような黒い羽に変化していきます。  「わたしもまものだからだよ。それがあればわたしの長  年の夢がかなう。さあ、およこし!!」 END n18  「なぜだ、なぜこのもの達に負けたのだ。」  「やい、僕達を元の姿に戻せ!!」   まものは4人をじ―っと見つめ、しばらくしてなにか  分かったようにほそく微笑みました。  「そうか!!君達には幸運の女神、すなわち、やり直さ  せてもらったのか。それならば仕方がない。いいだろう、  今回は君達の勝ちだ。だが、いつの日か,,,。」 END n19   まものはそれだけを言い残すとふっと消えてしまいま  した。気付くと4人はもとの姿にもどり、いなくなって  いた人達も現れ、なにごともなく時はながれ、、、 END n20   しかし、まものは死んだわけではありません。いつの  日か、また、、、、、。 END n21                       おわり? END