:E 優勝だ! 長い戦いが今終わった。  俺たちは抱き合って喜ぶと、観客に 大きく手を振って、声援に応えた。  そして優勝カップがジム親父に 手渡され、それを大きく掲げた! :VN0+NEXT1 :VO1+NEXT2 :J+NEXT3 +NEXT1 :E 更に良いことに、ウール姫が 見つかった、ってニュースが入った!  マフィアたちに協力させて 見つけたらしい。  しかし、シャーマン国が獅子皇子と ウール姫の婚約を破棄してきた。  姫が誘拐中に汚された、って 噂が流れたからだ。 :J+NEXT3 +NEXT2 :E 優勝した功績で、俺の容疑は一応 不問になった。  何だか納得できないが、 メーリフも同じ気分らしい。  俺の方が、割に合わないけどな! :J+NEXT3 +NEXT3 :FP0 :E ルウムに戻ってから、俺達はどこへ 行っても英雄扱いだった!  街には、横断幕がかかっていて 「ピンク・パッサーは、  パーフェクト・プレイヤーだ!」 なんて書いてあるし、最高の気分だ!  数日後に、城で祝賀会が催されて 選手全員が招待された。  その式の最中に、王から呼び出されて 謁見の間に通された。 「今回は、本当に良くやってくれた。  礼を言うぞ。  ・・・えー、オホン。  ワシは今日、娘たちの婿を発表する  つもりじゃ。  ・・・その前に聞いておくんじゃが、  お主の望みは誰じゃ?」 :Mカシス姫,+NEXT4,ウール姫,+NEXT5,エスカ姫,+NEXT6,選ばない,+NEXT7, +NEXT4 :FP1 :E「カシス様を」 突然、王は怒り出した。 「この痴れ者が!  身の程をわきまえんか!」 ムカッと来て、思わず叫んじまった! 「アンタが聞いたんだろ!」  近衛兵が一斉に、俺に向かって槍を 構えたが、王は手振りで制した。  しばらく睨みあった後に、 王がニヤッと笑う。 「ふん、まあええじゃろ」 :J+NEXT10 +NEXT5 :FP2 :E「ウール様と結婚させて下さい」 王は苦笑いして、ボソボソ呟いた。 「そうか、ウールが良いか・・・。  人気があるのゥ」 :J+NEXT10 +NEXT6 :FP3 :E「エスカ様と結婚させて下さい」 王は突然、満面の笑顔で言った。 「アレはじゃじゃ馬じゃぞ?」 「いえ、彼女は明るくて、  思いやりのある方です」  俺がそう言った途端、王は 親バカっぽいデレデレした顔になった! 「そうじゃとも、エスカは  優しい娘じゃぞ?  いつだったか、狩りへ出かけた時も  あれは、半年前じゃな・・・」  しまった! だが遅かった。  それから延々と、思い出話を 聞かされた・・・。 :J+NEXT10 +NEXT7 :E「いえ、有りません」 王はムッとした顔で言った。 「ワシの娘では不満だと申すのか?」 「いいえ。  素晴らしい女性たちだと思います」 「では、何故だ?」 「まだ、家庭を持つ気はありません」 「ふむ・・・それだけか?  本当にそうなのか?  変わった男じゃのぉ」 :J+NEXT10 +NEXT10 :E 祝賀会場へ戻ってくると、 メーリフがムスッした顔で近くに来た。 「おい、お前誰を選んだ?」 「・・・」 「答えろ!」 「・・・」 「ちっ、王になったら真っ先に  お前を牢に送ってやるぜ!」  ヤツは捨て台詞を吐いて、大股で 立ち去った。 :VO0+NEXT13 :E 入れ替わるように、エスカ姫が メーリフを警戒しながら近寄って来た。 「・・・アイツ、何を言ってたの?」 「大した話じゃ無い」  彼女はキョロキョロと辺りを見回して 俺を廊下へ連れ出した。  エスカ姫は、数回俺と壁を見て、 意を決したように切り出した。 「私、この国から出るわ」 「・・・はァ?」 「もう貴族なんてウンザリ!  あ、あの変態もいるし・・・」 「へ、へぇ・・・」  姫は、急に不安そうな顔になって 俺を上目遣いに見た。 「・・・それで・・・  お願いがあるんだけど」 「何だ?」 「・・・私と一緒に・・・」 :M一緒に行く,+NEXT12,行かない,+NEXT13, +NEXT12 :E「分かった。  一緒に行こう」  エスカ姫は満面の笑顔を見せたが、 すぐに不安そうな顔になった。 「で、でも本当に良いの?」 「嫌なのか?」 「ううん!」  俺が笑って抱きしめると、エスカ姫は 腕を俺の首に回してきた。  そんなわけで、俺はエスカと 駆け落ちした。  彼女は、もともと宮廷暮らしが 合わなかったらしくて、下町暮らしは すぐ馴染んだ。  だがルウムは、メーリフとカシス姫が 結婚して、国内が荒んでいるそうだ。  この生活も、あまり長続きしない 予感がする。  今度産まれて来る子供のためにも、 また別の戦いが始まるだろう。 ― END ― :Q +NEXT12 :E「いや、悪いけどダメだ」  俺が答えると、エスカ姫は 泣き笑いの顔で言った。 「・・・元気でね!」 姫は、顔が見えないように走り去った。 :J+NEXT13 +NEXT13 :E 宴も半ばまで進んだ頃、 重大発表があると告げられて、 ぞろぞろと大ホールに移動した。  貴族連中は、前列に陣取っていて、 俺たち平民は、ボーンズやシェッケルと 同じ末席の端に座った。 ボーンズが、呆れ顔で軽口を叩く。 「どうやら、お情けで座らせて  いただいてるってわけか」  メーリフが前列で笑ってる。 余裕しゃくしゃく、って感じだ。  王の到着を知らせる音楽が鳴らされて カシス姫、ウール姫の順に着席すると、 最後に、王とお后が入場して 玉座に着席した。  会場内は静まり返って、王の言葉を 待った。 「本日はめでたき日じゃ!  この度は、先の大会で優勝という  大きな吉事があったが、  これにあやかって、長年の問題である  我が愛姫たちの、婚約を発表する!」  ザワザワと、会場内がどよめいたが 分かっていた事なので、すぐ静まった。 「では、これから発表を行う」  書状をうやうやしく持った老人が 現れて大きな声で読み上げた。 「メーリフ・ド・フォーク!  前へ!」  フォークは興奮した顔で、会場内を 見まわすと、得意そうに壇上に進んだ。  そして、カシス姫を値踏みするように 見ている。  カシス姫は無表情で、 何を考えているのか分からない。  メーリフがゆっくりと上がって こちらを向いて立った後に、 司会が続けて言った。 :VP1+NEXT20 :VP2,N1+NEXT20 :J+NEXT30 +NEXT20 :E「ホーク・アルカンド!  前へ!」  今度は大騒ぎになって、司会が必死に 静かにするよう怒鳴っている。  ボーンズがニヤッと笑って、 俺の肩をどやしつけ、 シェッケルとベルトークは、 拳を突き出して、俺と拳を併せた。  俺が立ち上がって壇上へ歩きだすと 貴族たちの興味と非難の視線が、 一斉に注がれる。  壇上を見上げると、メーリフが 殺意のこもった目で、俺を睨んでたが 知らん顔で受け流した。 メーリフと並んで立つと司会が言った。 「続きまして、カシス・ド・ルウム殿下  ウール・ド・ルウム殿下、前へ!」  エスカ姫と、ウール姫が席から立ち、 しずしずと近づいて来た。 :VJ1,P1+NEXT21 :J+NEXT22 +NEXT21 :E 俺の横に立ったのはカシス姫だった! メーリフが怒り狂った眼で、俺を見ると 殴りかかって来た! 「間違ってる!  これは何かの陰謀だッ!」  極どい所でかわすと、メーリフは 近衛兵に取り押さえられて 連れ出された。 「ふぅ、全く困ったもんじゃ」 王が呟くと、宣言した。 「皆の者、心して聞くが良い!  カシスの婿はホーク、  ホーク・アルカンドじゃ!  そのように心得よ!」  まだザワザワしていたが、 拍手が起こった。  カシス姫は、恥ずかしそうに顔を 伏せている。  ウール姫は少し寂しそうな顔で、 拍手をしていた。  王は満足そうで、お后も厳しいながら 何か、ホッとしたような顔をしている。  細かい儀式の後、お披露目が終わり 小姓に案内された客室に入ると、 俺は疲れで、立派なソファにドカッと 座り込んだ。 その途端、扉がノックされた。 「王がお呼びです」  重い体を引きずって、謁見に向かうと 王が一人で待っていた。 「いきなりな話で悪かったのぉ。  今更聞いても仕方が無いが、  どうじゃ?やれるか?」 「分かりません」 「そう畏まらんでもええ。  いずれ、お前が王になるんじゃから」 「そのお話ですが」 「おっと、辞退するのは却下じゃ。  たまには他国の、しかも平民出の王も  面白いからの。  ふぉっふぉっ!!」 王は、一人で悦に浸っている。 「何で俺なんです?」 王は真顔に戻って言った。 「・・・ふむ、そうじゃな・・・。  まあ、アレよりは良いだろう、と  言うところかの」 「メーリフですか?」 「うむ、最近フォーク卿が勢力を  伸ばしておるからな。  それに、ワシも父親じゃからの。  なるべく、望んでる結婚をさせて  やりたいからのォ」 「カシス姫が?」 「口には出さんが、見れば分かるさ。  まあ、アレを女王にするのも手じゃ」  結局、ウール姫はメーリフとの婚礼を 断ると、修道院に入る事にしたそうだ。 それと、エスカ姫が出奔して行方知れず になってしまった。  婚礼の当日、カシスは式の間じゅう 緊張して青ざめた顔をしていたが、  祝典が終わり、新婚旅行の馬車に 乗り込むと、ホッとした表情になった。 「疲れたか?」 カシスは首を横に振ると、馬車の窓から 外を見て呟いた。 「エスカも居たかしら・・・」 「多分な」  俺も一緒に窓から外を覗くと、 街路で旗を振っている人々が見える。 王様ねぇ・・・俺の柄じゃないな。  急にカシスがこちらを向くと、 ニコッと笑った。 「大丈夫よ。  貴方は良い王になれるわ」 「そうは言ってもメーリフもいるし、  問題は山積みだぜ」 「貴方には、良い仲間が  いらっしゃるんですもの。  ・・・それに、私も・・・」  恥ずかしそうに、顔を伏せた。 ― END ― :Q +NEXT22 :E 俺の横に立ったのは、ウール姫だ。  メーリフが勝ち誇って、俺を見る。 ザワザワと騒がしい中、王が宣言した。 「カシス姫の婿には、  メーリフ・ド・フォーク卿!  ウール姫は  ホーク・ド・アルカンド卿とする!  そのように心得よ!」 ざわめきが大きくなった。 ホーク・ド・アルカンド卿? 「ホークには、男爵の称号に加え、  新領土になった[ヤパン]の施政官に  任命する!」 「これは、島流しなんじゃないかな?」 俺は、ヤパン行きの船の上で呟いた。 「そうおっしゃらないで。  異文化の統治なんて、メーリフ様には  無理ですもの」 ウールが話しかけてきた。 「手厳しいな。  だが、俺と一緒なんて貧乏クジだな」 「どうしてですの?  今から楽しみですわ。  どんな所か、ワクワクしてるの!」  ウールは、城を出てからずっと はしゃいでいるが、いかにも無理してる って感じで痛々しい。  まあ、彼女にとっては良いかもな。  ヤパンに到着すると、妙な髪型と服の 男たちが、反った剣を腰に下げている。  俺を睨みつけて、かなり手強そうだ。 政治なんて分かんねぇが、 一つやってみるか。  まずは、貴族なんてのを無くして みるかな。 ― END ― :Q +NEXT30 :E「以上、カシス姫と婚約の儀を行う!」 ワーッと歓声が上がり、司会が 静かにするよう怒鳴っている。  俺はボーンズと見交わして、 さっさと会場を後にした。 「けっ。  やっぱり出来レースかよ」 俺は肩をすくめた。 「まあ、こんなもんだろ」 「つまんねーな。  これからどうする?」 「そうだな・・・」 :VH1+NEXT31 :VI1+NEXT32 :E「こんなツマんねえ国は、  もうウンザリだぜ。  いっそ、ブルジラにでも行くか」  そんなわけで、 俺達はブルジラに亡命した。  ルウムでは大問題になったが、 メーリフの野郎が国王なんて 逃げ出すのが正解ってもんだ。 俺は、今日もフィールドを走っている。 ― END ― :Q +NEXT31 :E 特に当ても無く、外へ出ると、 どこかで見たような赤い、 派手な服の女が立っている。 グレイスだ! 「よお、久しぶり」  グレイスは顔を見るなり、 俺に文句を言ってきた! 「酷いじゃない!  あれから何度も、手紙を送ったのに  返事一つくれないなんて!」 「いや、試合で忙しくてね」 「でも、もう終わったんでしょう?  まだルウムにいるの?」 「いや、恩賞も貰ったしなぁ。  そろそろ出るつもりさ」  それを聞いた途端、グレイスの瞳が 輝いた! 「本当?  それなら、オストーアに来ない?  オストーアで、次の大会のために  選手を探してるの!  貴方なら絶対、大丈夫よ!」 「へぇ、それは面白そうだな」  確かに、オストーアで募集はしてたが グレイスに、一杯食わされた!  無理やり、親のアンガル公爵と会って とんとん拍子で、結婚させられた!  子供が出来たから、責任を取れ! なんて言われたら、仕方ないだろ?  それはグレイスの嘘だったけど、 今では本当になっちまった。  まあ、公爵も孫が出来て 静かになったし、俺もグレイスも 幸せだから良いかな。 ― END ― :Q +NEXT32 :E 恩賞を貰ってルウムから出ると、 俺はイテリオのモンローの所に 行ってみた。  もうホテルは引き払ってて、 どこに行ったか、分からないそうだ。  モアローは最近、落ち目になってて 公演も、全然やってないらしい。  酒場で適当に飲んでたら、 チンピラっぽい男に声をかけられた。 「おっ!  あんた、ピンクパッサーじゃん!  準決勝は、よくもやってくれたな!  でも、あんたのシューズくれたら  許してやるぜ?」  面倒だったし、シューズも邪魔に なってたんで、そいつにやると よっぽど嬉しかったのか、 小躍りしていた。 「お礼に、あんたに凄ぇ上玉の女、  紹介してやるよ!  ビビるぜ!」 「そんな女、いやしないぜ」 「いやいや、絶対ビビるね!  賭けても良いね!」 「ふーん、本当か?」 「見りゃ分かるって!」  男に着いて行くと、 割と小奇麗な宿に来た。 「あんたは特別、安くしとくよ!」  そう言い残して、男は部屋から 出て行った。  しばらく待っていると、 ゆっくり扉が開いて、気だるそうな 女が入ってきた。  ボサボサの髪に、だらしなく服を 引っ掛けるように着ている。  暗くて良く分からないが、 かなりグラマーな女だ。 「・・・あんた、初めて・・・?」  しゃがれた声だが、聞き覚えがある 気がする。 「・・・モンロー?」  モンローは、ハッとして顔を上げると 手で口をおおって、部屋から 逃げようとした! 「おい、待てよ!」  俺がモンローの腕を掴むと、 彼女は逃げようとして、俺を 突き飛ばそうとしたが、全然力が無い。 「落ち着け、逃げるなよ!」  彼女は、力無く座り込むと、 諦めて顔を伏せた。 「・・・何しに来たのよ・・・」 「あんたに会いにさ」  モンローは顔を上げたが、 すぐ顔を伏せた。 「・・・うそ。  ルウムの英雄様が、そんなはずない。  もう、あたしを忘れてよ」 「一体、何があったんだ?」 「・・・もう帰って。  お願いだから・・・」 「分かった、今日は帰るよ。  でも、また来るぜ」  裏口で待っていると、案の定 閉店前に、慌ててモアローが出て来た。 「待ってたよ」 「・・・もう、来ないでよ!  何でそんなに、嫌がらせすんのさ!」 「あんたの借金は、俺が払っといたよ。  おかげで無一文だけどな」 「なっ、そ・・・バカじゃないの!」 「まあ、そうだろうな。  お礼に、メシ食わせてくれ」  モアローは、苦しそうに泣き笑い していた。  その後、俺はイテリオのチームに 雇われて、モアローと下町でつつましく 暮らしている。 ― END ― :Q