:E 大会スケジュールが発表された。 同じBグループにルイーズ国、 ポールウィン国、シャーマン国がいる。  いきなりシャーマン相手か! まあ、決まったもんは仕方が無い。 いつかは[獅子皇子]共々、 やらなきゃならない相手だからな。  前回の優勝国アルゼルンは、 Aグループだ。 そのAグループに見慣れない国がいる。 カメレオン? 話によると、暗黒大陸アフレコから 初参加してきたらしい。 だが、アルゼルンの[神の子]に やられて、最下位ってとこだろうな。  開催国のイテリオはCグループだ。 Cグループは、他に強そうな国も無いし 順当勝ちするだろう。  ある日、監督が留守の練習中に メーリフがボーンズを奴隷呼ばわりして チームから追い出せ!と言い出した。  戦争終結時に、ルウムは民権運動が 起きて、貴族制度の改革をしたらしいが 差別は全然、無くなってない。  ろくに練習をしない貴族連中に、 市民上がりの連中は不満が貯まっていて たちまち喧嘩になった!  帰ってきた監督の一喝で治まったが、 チームの雰囲気は悪くなる一方だ。  日々は過ぎ、ついに大会が始まった。 開催国イテリオらしい派手な開会式が 終わり、アルゼルン対カメレオン戦が 行われた。  相変わらず、アルゼルンの [神の子]マナドールは注目の的だし、 どうせ結果は見えてたんで、 俺たちは明日のルイーズ戦に備えて、 すぐに宿へ帰った。  ところが、早めのディナーを食ってる 最中にニュース屋がとんでもないネタを 持ってきた! 「アルゼルン、敗れる!」  町中の酒場や賭け屋では、 今日の結果をケンカ交じりの論争が 起きていた。 もちろん俺達もだ! だが、明日勝たねば意味は無い。  そういえば貴族ボンボン達は勝手に、 宿を別の高級ホテルに変えたらしい。  いつもの事とは思いつつも、 イライラしながら自分の部屋に行くと、 正面の大きな扉窓が開いていて、 外から吹いて来るそよ風で、 カーテンがたなびいていた。 何かいる・・・? 「誰だ?」 ゆっくりと窓の外枠に人影が移った。 女だ。それも、かなりグラマーな。 全身黒ずくめの格好で、 顔上半分を黒いマスクで隠している。 眼だけが、月光で照らされる度に 妖しく光っている。  彼女は慎重に、俺の様子を見ていた。 こちらの出方を窺ってるらしく、 なかなか動かない。 俺は、試しに動いてみた。 「何か用か?」 一瞬、ピクッと動いたが唇の端でニッと 笑うと、落ち着いた声で話し始めた。 「ええ、聞いてもらえるかしら?」 「名前は?」 一瞬迷っているそぶりを見せたが、 気持ちを決めたようだ。 「ミリアよ。  ・・・良い商売の話があるんだけど」 「俺はカネなんか持って無いぜ?」 「貴方に売って欲しいものがあるの」 「売る?スパイクかユニフォームでも  欲しいのか?」 「違うわ」 「じゃあ何だ?」 「名誉よ」 「はぁ?」 「試合で負けるよう仕向けて欲しいの」 「つまり、八百長をしろって事か?」 「そう言う事よ」 :M考えておく,+NEXT1,負けない,+NEXT2, +NEXT1 :FA1 :E「まあ、面白いかも知れないな。  そこで、だ」 「見返りが何か、って事でしょ? 何でもいいわよ」 「いやに気前がいいんだな。  スポンサーがいるのか?」 返事は無かった。 「それなら、あんたでも良いのか?」 彼女は驚いた様子も無く、ニヤリと笑った。 恐い女だ。 「明日、期待してるわ」 そういうと、身軽に窓から出て行った。 :J+NEXT3 +NEXT2 :FA0 :E「それは無理だな」 「・・・どんな条件なら良いの?」 「俺は、負けるのが大嫌いなんでね」 彼女は口元で、微笑した。 「無駄よ。 どうせ負けるんだから」 そう言い捨てて、身軽に窓から去った。 どういう意味だ? :J+NEXT3 +NEXT3 :E ルイーズとの試合当日、さすがに 緊張してるのかうろうろしたりと、 落着かないヤツが多い。  ブーマは、静かに目を閉じている。 相変わらず、何を考えてるのか 分からないヤツだ。  ボーンズは何やらブツブツつぶやいて しきりに神様にお祈りしている。  ジム親父は、念入りに準備運動や 手袋をチェックしたりベルトークと 守備について相談している。  隣で、シェッケルが真っ青な顔して ガチガチに緊張している。 「・・・僕、どうしよう・・・」 それを見たメーリフが、 シェッケルの頭を掴んで揺さぶった。 「おい!  足を引っ張るんじゃないぞ!」 そう言った後、皆に向き直り命令した。 「お前らは、私を引き立てるためだけに  働くんだ。  分かってるな!」 全く、こんなんで勝負になるのか? フェレットは・・・いない? 監督に聞くと、今日は来ないそうだ。 やっぱり貴族は貴族か。  フィールドに出ると、王や大貴族たち が観覧席にいた。 女も1人だけいるが、なんだか若いな。 俺にベルトークが注意した。 「おい、試合前に女性の品評なんか  するんじゃない」 どうも、こいつはうるさくて困る。 こっそりボーンズに聞いてみた。 「あれがそうか?」 「いや、聞いてたよりも若過ぎるぜ?」 「じゃあ、貴族の娘かな?」  はっきりとは分からないが、 怒ってる感じがする。 気のせいか? 白い髭が立派な王が、楽しそうに彼女に 話し掛けてるが、彼女は俺たち選手を じーっと見ている。 いよいよ戦いの始まりだ! :W1+WIN1,+LOSE1,+DRAW1, +WIN1 :FB1  なんとか勝つ事が出来たが、 問題は山積みだ。 控え室に戻ると、いきなり近衛兵に 守られた女性が出迎えていた。  軽くウェーヴのかかった長い金髪、 澄んだ青い瞳と、白い肌に優しい笑顔と 柔らかそうな唇、まるで女神みたいだ。 シェックがバカみたいに見とれている。  監督とメーリフが臣下の礼をとると、 俺たちも、慌てて真似をした。 彼女は、良く透る声で話し始めた。 「皆さん、本日は我がルウムのために  働いて下さって有り難うございます」 そう言った後、彼女は立つよう促して 1人1人に労いの言葉をかけてくれた。 「貴方はホークさん、ですね。  今日はご苦労様でした」 「ああ、負ければすぐに休めるのにな」 彼女や周囲の連中は驚いて、 メーリフとベルトークが俺を睨んだが、 彼女は上品に笑い返した。  彼女が去ってから、ベルトークに 聞いてみた。 「今のは誰だ?」 ベルトークには珍しく、 怒った口調で答えて来た。 「口を慎め!彼女は  第二王女のウール・ド・ルウム様だ。  あんな無礼な態度だと、  次は鞭打ちだぞ!」 「ふーん、じゃあ今日観覧してたのは  誰なんだ?」 「知らん!  見てない!」 そう言って、ツケツケと立ち去った。 :J+SKIP1 +LOSE1 :FB0  まあ、これじゃ負けるのも当り前か。 メーリフが、親父やベルトークに文句を 言い散らしている。 点を取られたのは、奴らのせいだけじゃ 無いだろうのに、誰かのせいにしないと 気が済まないらしい。 やれやれ。 :J+SKIP1 +DRAW1 :FB2  負けよりマシだが、重苦しい雰囲気が 控え室に漂っている。 次だ、次。 :J+SKIP1 +SKIP1 :E その夜、宿屋に帰ってくると また窓が空いている。 「ミリアか? 」 :VB0+MILIA1 :VA0+MILIA0 :E「約束を守らなかったわね」 苛立ったように、微妙に声が甲高い。 「勝負は時の運さ。  俺一人でどうにか出来るもんじゃ無い 」 「言い訳は聞きたくないわ」 「次は任せとけ」 「・・・どうだか」 :J+MILIAZ +MILIA0 :Eイライラしてるらしく、落着いてない。 「やってくれるわね」 「別に。  当然の結果さ」 「どうせ今日だけよ」 :J+MILIAZ +MILIA1 :VA0+MILIA3 :E「ご苦労様」 事務的な口調だ。 「じゃあ約束を守ってもらおうか?」 彼女がしなやかな動きで、 腰をくねらせながら近づいてきた。  俺がベッドに腰掛けると、 体に絡み付くように腕を回し、 唇を貪るようにキスをしてきた。 きついジャスミンの香りがする。 だが、突然に離れると言った。 「今日はここまでよ」 「何だと! こっちは危ない橋を渡ってんだぜ?」 「次も期待してるわ」 :J+MILIAZ +MILIA3 :E「勝てないって言ったでしょ」 「まだ、終わったわけじゃない」 「ま、せいぜい頑張って頂戴な」 :J+MILIAZ +MILIAZ :C/rom0/story3.txt