:E ベスト8まで勝ち進んで、 優勝も夢じゃ無くなってきたぜ!  だが連戦で疲労が貯まってきたので、 監督が突然、1日休暇をくれた。 :FJ0 :FK0 :FL0 :VF1+NEXT1 :VF2+NEXT10 :J+NEXT20 +NEXT1 :E 休みだってのに、 監督が部屋にやって来た。 「舞踏会の日を、覚えてるか?」 「何かあったかな?」 「・・・ふむ。  カシス様から、招待の伝令が来てる」 :M行く,+NEXT2,行かない,+NEXT3, +NEXT3 :E「部屋で寝てます」 監督はムッとすると、命令した。 「行き給え」 「疲れてるんで」 「そういう問題では無い」 「監督は、疲れて、俺が、試合で、  満足な、仕事が、出来なくても、  良いって訳?」  監督はイライラした顔をしたが、 乱暴に扉を閉めて出て行った。 :J+NEXT30 +NEXT2 :E「行きます」 監督は事務的に言った。 「表に馬車が待たせてある。  急げ」 大使館に着くと、兵士が2列に ズラッと並んでいてイヤな雰囲気だ。 「降りろ」 偉そうに、隊長らしい男が命令した。 「おい、これはどういう歓迎だ?」 「降りろ」 無表情に繰り返した。 イヤな感じだ。 仕方なく馬車から降りると、 いきなり俺の両腕を兵士がつかんだ。  引きずられるように、地下室に連れて 行かれると、鉄の檻に放り込まれた。 「おい!説明しろ!」 だが、兵士達は無言で扉を閉めると、 立ち去って行った。 しばらくすると、また騒々しい声がして 隣の檻にボーンズが放り込まれた。 「ホーク!  こりゃあ、どうなってるんだ?」 「俺が聞きたいね」 仕方が無いので、暫く待っていると 兵士が来て、無表情に言った。 「来い」 薄暗い部屋に連れて行かれると、 奥からエリザベート后が現れた。 「その方らが首謀者か?」 「はぁ?  何の話だ?」 そう俺が言った瞬間、後ろの兵に 思いっきり打ち据えられた! 「何しやがる!」 ボーンズが暴れたが、剣を 衝き付けられて黙り込んだ。 「舞踏会で、馬鹿げた大騒ぎを起こした  のは、そちであろう?」 「・・・ああ」 俺が痛みを堪えて立ち上がると、 また、打ち据えられた。 「言葉を慎め!」 くそ・・・覚えてろよ。 「本来なら重罰を加える所であるが、  これまでの功績に免じて  鞭打ちの刑で留めて進ぜよう」 「何だと!?」  俺達は服を脱がされて縛り上げられ、 舌を噛まないよう猿轡をされた。 そして、いかつい拷問兵達が無言で 鞭を力一杯振るった!! 「ぐ・ぁ・・!!」 「む・・・グッ!!」 打たれる度に、酷い激痛が走る! 奴らは黙々と鞭を打ち続け、体中から 血が滲み出た。  意識が朦朧としてきた時、 后が鞭を取って俺を激しく打ち始めた! 狂ったように笑いながら。  獣のような、唸り声が聞こえる。 自分の声だった。 体を動かそうとしたが、激しく体が 痛んで無理だった。 目だけ動かして部屋を見たが、 暗くて分からない。 多分、元の檻のようだ。  体中が熱っぽい。 歯をくいしばって、体力が回復するのを 待った。  どれぐらい時間が経ったのか、 少し周りが明るくなってきた時、 ガチャガチャと鍵を開ける音がする。  静かに扉が開くと、黒いフード付きの コートを着た女が、オドオドした 1人の兵士と入ってきた。 「ホーク・・・?」  カシス姫だ。 俺は少しだけ動いてみたが、 体中に激痛が走って、思わずうめいた。 姫は小さく叫んで後じさったが、 上ずった声で、運ぶように命令した。  運ばれる時に、体中の骨が折れる みたいにバキバキと痛んだが、 なるべく黙っていた。 「・・・ボーンズも・・・」  俺がそう言うと、姫は俺を降ろさせて 連れて来るよう命令した。  カシス姫と二人きりになったが、 それどころじゃない。 姫は、俺の傷跡を痛そうに見つめた。 「・・・ご免なさい・・・」 「・・・あんたが謝る事じゃない」 カシス姫は、大きく頭を横に振った。 「私・・・こうなる事を知ってて  止めなかった。  お母様は、必ず恐ろしい罰を与える  だろうって・・・。  最初は、いい気味だって思ったわ。  でも、恐ろしくなって・・・  また殺してしまうかも、って・・・」 「・・・誰か死んだのか?」 姫は、答えず続けた。 「この国から出た方が良いわ。 お母様のお怒りを受けてしまったら  もう・・・」 :M国を出る,+NEXT4,試合を続ける,+NEXT5, +NEXT4 :E「・・・そうするよ」  姫は悲しそうな顔をすると、俺の頭を 抱きしめて、唇を静かに重ねる。 そっと離れた時、兵がボーンズを連れて 戻ってきた。 「馬車を用意させます」 姫はパッと身を翻すと、走り去った。  ガタガタ揺れる馬車に悪態を つきながら、ボーンズが言った。 「全く、とんでもねぇ国だよ!」 「・・・そうでもないさ」 「あーあ、俺の野望もこれまでか。  イテッ。  もっと静かに走らせろよ!」 「俺達を助けて、  エスカ姫は大丈夫なのかな?」 「知るかよ!  あのサド后、絶対許さねェぞ!」 「お前、これからどうするんだ?」 「そうだな。  ミイラに会いに行ってみるか」  俺達はアフレコ大陸へ渡った。 今はミイラの口利きで、子供たちに サッカーを教えている。  風の噂で、エスカ姫とメーリフが 結婚したらしいが、ルウム国内はかなり 荒んでいるそうだ。 ― END ― :Q +NEXT5 :FJ1 :E「・・・まだW杯が終わって無い」 カシス姫は、呆れ顔で言った。 「それどころじゃ無いでしょう! 第一、その体では無理よ!」 「・・・まだ、足は折れてない」 「何を言ってるの!  殺されてしまうわ!」 「・・・まだ生きてる」 しばらく睨み合っていたが、彼女は顔を 覆って泣き出した! 俺が痛みを堪えて、そーっと彼女の頬に 手を伸ばした。  彼女は、俺の手が触れると ビクッとしたが、俺がニヤッと笑うと ハンカチを取り出して、涙を拭くと 泣き笑いのような顔をした。  突然、姫が急に顔を近づけて唇を 重ねて来た。 ちょっとビックリしたが、黙ってされる ままでいる。 姫は、しばらく続けた後に、急に離れて 真っ赤になりながら、馬車を用意する とかモゴモゴ言いながら去った。 :J+NEXT50 +NEXT10  何をしようか考えていると、伝令が ウール姫から茶会の招待を伝えて来た。  馬車に揺られて大使館に到着すると 来客室に通された。 品のいい部屋だが、どうにも場違いで、 背中がムズムズする。  しばらく待つと、見知らない女の子が 案内されて入ってきた。 小さくて、亜麻色のきれいな髪だ。  ところが俺を見るなり、小さい悲鳴を 上げた。 「こ・・・こん・・・」 どもりながら、棒立ちになっている。 「初めまして。  ホーク・アルカンドです」 「こっここ・・・こんにちわ」  嬉しいわけじゃ無いらしい。 やっとの事でそれだけ言うと、 俺に近づかないように部屋の角で、 ハンカチを揉み絞っている。 妙に緊張した空気が部屋に漂っていた。 「ご免なさい。  お待たせしてしまいましたわ」  俺が話しかけようとした所へ、 ウール姫が入ってきた途端、 女の子がバッタリ倒れちまった! 「ターミネア様・・・?  まぁ大変!」  ウール姫が医者を呼んでいる間に、 俺は倒れた彼女に駆け寄った。 「おい、大丈夫か?」  ペチペチと可愛い頬を叩くと、 うなりながら、うっすら目を開けた。 どこだか分からない感じだったが、 俺を見ると叫んで、また気を失った。 何々だ!  ターミネアを寝かせてある部屋から 出てきた宮廷医が、軽い貧血だと 説明して、ほっとした所へ温厚そうな 初老の男がやってきた。 「娘はどこです!」 「今、安静にしてらっしゃいますわ。  軽い貧血ですって」 「ああ・・・一体何があったんです?」 俺が説明しようと、口を開いた時だ。 「貴様か!  お前は何者だ!  一体何をした?  ここで何をしている!」  たたみかけられて、バカみたいに 口を開けっぱなしにしちまった。 「衛兵!  不審な者がいるぞ!  どうして捕えない!」 「あー・・・」 だんだん腹が立ってきた。 「スプーン卿!  落ち着いて下さい!」 姫が一喝すると、やっと男が黙った。 「彼は、私が呼んだお客様です。  失礼ですわ!」 「・・・私のせいなの」  ターミネアが部屋から出てきたが、 顔がまだ青い。 「おおターミネア、無事だったか!」  スプーン卿が彼女を抱きしめて、 顔にキスしまくっている。 何だか凄い親バカだ。 ウール姫が、ため息をついて言った。 「今日はお加減が良ろしく無いですし、  お茶会は次にしましょう」 「うむ、今日はパパと帰ろう」 スプーン卿も同意して言ったが、 ターミネアは膨れっ面だ。 「大丈夫ですわ。  ウール様、行きましょう!」 「しかし、ターミネア・・・」  心配そうな父親をよそに、 フラフラしながら庭へ行ってしまった。 心配そうに、スプーン卿は見送ったが、 俺に向き直ると、こう言い捨てた。 「娘に何かあったら、許さんぞ!」  一緒に庭を歩きながら、 ウール姫がフォローする。 「ごめんなさいね、  スプーン卿は良い方なんですけど、  ターミネア様の事になると  少しおかしくなってしまうんです」 「男親なんてあんなもんさ。  彼女も子供だし、心配なんだろう」 「・・・彼女は来年、二十歳ですわよ」  ええっ! 女はやっぱり分からない。 俺が驚くと、姫は小さく笑った。 「やっぱり、ホーク様でも  分からない事はあるんですのね。  安心しましたわ」 「俺は神様じゃないからね」  庭の中央に小さいテーブルがあって、 給仕役のボーイが立っていた。 だが、ターミネアがいない。 「あら?探して参りますわ。  座ってらして」 「俺も行くよ」  二手に別れて探し始めたが、 何処にもいない。 まさかとは思ったが、手入れされた 生垣の下を覗き込んだ。  いた!横になっている。 近寄ると、慌てて逃げるように反対側に 潜り込んだ。 「おい、隠れんぼがしたいのか?」 「来ないで!」 やれやれ、嫌われたもんだ。 「はいはい、分かりました。  とにかくテーブルへ行こう」 そう言って歩き出すと、待って!だと。 「俺は、どうすれば良いんですかね?」 「・・・そんなに私、子供っぽい?」 聞かれてたか。 「ウール姫よりは、ね」 「ウール様と比べられたら、誰だって、  パパだって子供っぽいわ!」 それは言えてる。 「あんたは特別だ。  赤ん坊みたい」 さすがに怒って、垣根の間から 顔を出した。 「失礼な方ね!  だったら、どうなれば大人なの?」 「キスしてみる?」  ターミネアは、みるみる真っ赤に なったが、ギュッと目を閉じた。 「キスぐらい、いつもパパとしてるわ!  そんなの平気よ!」 :Mキスする,+NEXT11,からかう,+NEXT12, +NEXT11 :FK1 :E こうして見ると可愛い事は確かだ。  驚かさないよう、そーっと垣根越しに 唇を近づけてチョンと触れた瞬間、 彼女は雷に打たれたように、 体がビリッと震えた。 「あ、ホー・・・」  愕然とした姫の顔を見た瞬間、 後ろでターミネアが倒れ込んだ!  俺は、1日牢獄に放り込まれた。 スプーン親父に殺されなかっただけ マシかもな。 :J+NEXT50 +NEXT11 :FK2 :E うーん、何か違うんだよな・・・。 俺は手を伸ばして、彼女の鼻をつまむと 驚いて殴りかかって来た! 「はにふうほを!」 「イテテテ、降参降参!」  彼女は一しきり気分が納まると、 クスクス笑い出した。  そこへ、ウール姫が現れると ターミネアが笑いながら、俺を指差す。 「ホーク様って、変な方ね!」 「あら  もうお友達になったんですの?」 「ええ!  お茶にしましょ!」 一緒に歩いている途中、姫が呟いた。 「不思議な人・・・」 :J+NEXT50 +NEXT20 :VG0+NEXT30  フェレットが貴族に気をつけろ、とか 言ってたな。 あれからどうなったんだ? 「おーい、フェル!」  壁越しに声をかけたが返事が無い。 もう一度呼んでみたが、無駄だった。 寝てるのか? :M入ってみる,+NEXT21,止めておく,+NEXT22, +NEXT21 :E ガラクタをどかして、隣の部屋に 入ると、フェルはベッドにいた。 そっと近づくと、完全に寝てるらしい。  うーん、こうしてみると確かに 可愛い顔をしてるな・・・。 い、いかん。 俺はそっちの趣味は無いんだ!  いきなりフェルが寝返りを打って、 うっすら目を開けた。 なるべく爽やかに笑って挨拶してみる。 「よぅ、お早よう」  フェルは、何が起きたのか分からない らしくて、パチパチ瞬きをした。 「キャーーーーーーーーーーッ!!!」  す、凄い声だ! 手当たり次第に、掴んだ物を投げつけて 俺は慌てて逃げ出すと、果物ナイフが 壁に突き立った! 「今度やったら殺す!」 今、死ぬところだったぞ! :J+NEXT22 +NEXT22 :E ボーンズの部屋に行くと、 シェッケルたちと賭けポーカーを やっていた。  シェックの一人勝ちらしく、 他の奴等は険しい顔をしている。 「街に行かないか?」 「今、取り込み中だ!」  仕方無しに扉を閉めると、 ボーンズの悲鳴が聞こえた。 ジム親父とベルトークは、出かけて 居なかった。  うーん、ブーマねぇ・・・。 一応行ってみるか。 ノックすると、いきなり扉が開いた。 ブーマが立っている。 「あー、その何だー・・・。  出かけないか?」  意外だが、ヤツが肯いた。 そういえば、こいつの声って聞いた事が 無いな。  当然、メーリフはいなかった。 :J+NEXT30 +NEXT30 :FL0 :E 大通りへ来ると、各国の国旗や 代表のユニフォームを売る売り子、 賭けのオッズを説明する声で、 活気付いている。  シャーマンとアルゼルンは、 順当に勝ち進んでて人気が高い。 特に皇子の肖像画は、若い娘に大人気で 飛ぶように売れている。 ちっ。  うろうろ歩き見ていてると、 東洋人らしい、細目の娘が前に立った。 「アナタ、ピンクさんデスね?  ワタシ、大ファンでス!  サイン下さイ!」 おおっ、俺も有名になったもんだ。 「よしよし。  どこに書けば良いんだ?」 「あっ、ペン忘れましタ!  こっち来てでス」  そう言って、俺の腕を引いて 路地裏に連れ込んだ。 「ここに有りまス」  彼女は、そう言って懐に手を入れると いきなりナイフで切り付けて来た! 間一髪でかわしたが、服が切られた! 「何の真似だ!」 だが、娘は無言で襲ってきた! :VG0+NEXT40 :E 速い! やられる!と思った瞬間、 横から鋭い蹴りが飛んできて ブーマがナイフを跳ね上げた!  女が逃げ出したが、ブーマが タックルして、捕まえちまった! あいつは何者なんだ? 「誰に頼まれたんだ!」  俺は尋問したが、娘は横を向いたまま 話そうとしない。 「・・・任せろ」  陰気な声で、ブーマがしゃべった! しかも、何だか嬉しそうだ。 :Mやらせる,+NEXT41,止めさせる,+NEXT42, +NEXT41 :E「任せた」  ブーマは、暴れる娘を袋小路に 連れて行った。 「この娘、どうする気だ?」 「・・・お前帰れ。  組織の事、聞く・・・」  ヤツは有無を言わせぬ口調で、 俺に命令した。 こいつの眼・・・ヤバいぞ。 何人か、殺した事が有るんじゃ無いか?  宿にブーマが戻って来るのを待って 聞いた。 「おい、どうだったんだ?」 やつは満足げに、ニンマリ笑った。 「・・・何も知らなかった。  ただの下っ端」 :J+NEXT50 +NEXT42 :FL1 :E「どうせ、何も知らないんだろう。 子供なんだし、放してやれよ」  渋々、ブーマが手を放すと 娘は全力で走って、人込みに消えた。 :J+NEXT50 +NEXT40 :E「チョっと休んでもらうネ」  そう笑うと、俺の右腿にナイフを 突き立てた! 「ぐあっ!」  娘は俺が倒れたのを見届けると、 人込みに消えた。 「幸い筋は切っていませんが、  安静が必要です」  医者がそう説明すると、メーリフが 嫌味たっぷりに言った。 「こんな時期に、ふらふら街を  出歩くなんて、無用心にも程が  あるんじゃ無いのか?」 監督も呆れ顔だ。 「その通りだ。  登録はしておくが、使うかはどうかは  分からんぞ」 :J+NEXT50 +NEXT50 :E 今日の相手は、ブルジラだ。 以前は最強と呼ばれていたが、 最近は、強豪の地位に甘んじている。 だが、相変わらず侮れないチームなのは 間違いない。  黄金の中盤と呼ばれるファルコン、 ピタゴラス、ジーグの3人は危険だ。  フィールドには、 [偉大なる黄]が待っていた。 陽気で短気なファルコン、 後ろに髪を束ねたピタゴラス、 優しげだが威厳溢れるジーグ、 どいつも、こいつも曲者揃いだ。  もっとも、ここにいる連中は 一癖も二癖もある奴ばかりだがね。 試合開始だ! :W7+WIN7,+LOSE7,+DRAW7, +WIN7 :E 中盤は球の奪い合いだったが、 運はこちらにあった。 ブルジラの観客から、一斉に ブーイングが起こり、色々と 投げ込まれる中を、彼らは去った。 さすがブルジラ、引き際も一流だ。 :C/rom0/story8.txt +DRAW7 +LOSE7 :E 負けた。 決勝は、前回と同じくアルゼルンと シャーマンが対戦して、 今回はシャーマンが優勝した。 「獅子皇子」と「神の子」の勇名は、 まだまだ続きそうだ。 俺は、今日もフィールドを走っている。 ― END ― :Q