□ 作品タイトルと作者
/*---------------------------------------------------------------------------
* 親指スウィング運動を用いる入力装置とGUI 「Thumb Swing (サームスウィング)」
* ThumbSwing.fx (2003/05/29) Ver. 1.00
* 作者: 熊澤逸夫
* Copyright (c) 2003,
*---------------------------------------------------------------------------*/
□ 作品ジャンル
ワンダースワン用入力装置とGUI
□ 概要
親指を横方向に振る簡易な運動(親指スウィング運動)によってワンダースワンの
5のボタンを複合的に操作して、親指一本で多様な情報を能率良く入力する入力装
置とこの入力装置に適したグラフィカルユーザインターフェイス(GUI)を提供する。
入力装置はワンダースワン既設のスイッチを最大限活用し、追加部品を最小限に
抑えて容易に入手できる材料のみを利用して低コストに構成した。
GUIはメニュー内容を変更することによって任意の用途に使用できるが、ここでは
今回のコンテストの課題部門である50音入力に使用した。高頻度で入力するスペー
スや改行、バックスペースは1度のスウィング運動で、またその他の文字は2回の
スウィング運動で子音と母音を指定して入力する。メニューは画面の上部1行のみ
を使用して表示し、占有面積を最小限に抑えた。内蔵の8x8ドットのフォントは小
さくて目が疲れるので16x16ドットの大きなフォントを導入した。
----------------------------------------------------------------------
□ 入力装置の構成
(1)親指のスウィング運動(左右に振る運動)検出部
ワンダースワンのX2キーとX4キーのON-OFFをスウィング運動中の親指の
位置に応じて切り替えて、X2キーとX4キーのON-OFF状況によって親指が
左右中央のいずれの位置にいるか検出できるようにした。
仕様:
親指位置が左の時 X2:ON X4:OFF
親指位置が中央の時 X2:OFF X4:OFF
親指位置が右の時 X2:OFF X4:ON
使用材料:
針金、ネジ、ボルト、ナット、内径1mmのプラスティックパイプ、
半田、ホットガン用グルー
(日曜大工店で入手)
(2)親指の上下運動(左右に振る運動)検出部
ワンダースワンのX3キーのON-OFFをスウィング運動中の親指の上下運動
によって切り替えて、X3キーのON-OFF状況によって親指が上がっている
か、下がっているかを検出できるようにした。
仕様:
親指が上がっている時 X3:OFF
親指が下がっている時 X3:ON
使用材料:
針金、半田、バネ
(日曜大工店とラジコン部品ショップで入手)
(3)スウィングレバー部
親指のスウィング運動と上下運動で動かすレバーであり、親指のスウィ
ング運動と上下運動に追随してレバーが左右、上下に振れるようにボー
ルジョイントによって本体に固定される。また親指に接触するレバー端
部は球形状の軟質性プラスティックとして指の接触の感触を良くした。
仕様:
長さ(ボールジョイントの中心位置から末端まで)25mm
左右方向への回転可能量 ±20度
上下方向への回転可能量 上方向へ10度、下方向へ0度
使用材料:
ボールジョイント、軟質プラスティック製ボール、ネジ、ボルト
(ラジコン部品店と東急ハンズで入手)
(4)サームレスト(Thumb
Rest)レバー部
キーボード操作中に腕を休息する目的に使用するアームレストと同様に
本装置操作中の親指の付け根に近い部分を乗せて親指を休息する目的に
使用する。サームレスト部に親指を軽く乗せるだけで親指の姿勢は安定
し、ワンダースワン本体も安定に保持できるようになる。さらにこの親
指でサームレスト部を前後に動かすことでワンダースワンのキー Y1,
Y3をON-OFFすることができ、このON-OFFにより入力モードとメニューの
切り替えを行う。また前入力のキャンセル(Undo)もサームレスト部を動
かしてY3をONすることによって行う。上述した親指のスウィング運動、
上下運動、そしてこのサームレストの操作によって合計5つのキーを1本
の親指で操作できる。またサームレストによりワンダースワンを片手で
安定に保持しながら、同じ手の親指一本ですべての操作を実行できる。
仕様:
長さ 25mm
高さ 7mm
使用材料:
針金、プラスティック版小片、内径1mmのプラスティックパイプ、
半田、ホットガン用グルー
(ラジコン部品店と東急ハンズで入手)
以上の各部の製作に使用した工具は、ニッパー、直径2mmのドリル、半田ご
て、ホットガンのみであるから、だれでも容易に製作可能である。
□ ソフトウェア(GUI)の構成
readme.html :
説明ファイル
ThumbSwing.fx :
実行ファイル
----------------------------------------------------------------------
□ 使い方
(1) ランチャーで ThumbSwing を選択して実行する。画面上部1行にメニューが現れるこ
とを確認する。画面上でメニューの下に灰色の帯が横に走っているが、灰色の帯の上
がメニュー表示領域、帯の下が入力する50音のひらがなを表示する文章表示領域と
なる。
(2) 右手の親指の先端を赤い軟質プラスティックのボールの上に乗せて親指の下腹部の近
くをサームレストレバーの上に軽く乗せる。右手の他の指はワンダースワンの背後に
まわす。こうしてワンダースワンを右手で保持しながら、右手の親指だけでスウィン
グレバーとサームレストレバーを操作する。右手だけで本体を保持し、また右手の親
指だけで全操作を行える点が本入力方式の特色である。
(3) プログラム起動後の初期画面のメニューは子音を示す「あかさたなはまやら」である。
サームレストレバーを手前に引くと子音の「わ」と高頻度に使用するスペースや改行、
バックスペース、そして句読点、括弧を入力するためのメニューが現れる。またサー
ムレストレバーを前方へ押すと「英数記」のメニューが現れる。このメニューで「英」
を選択すると英字入力モード、「数」で数字入力モード、「記」で記号入力モードへ
移行する。なお現時点では英字、記号入力モードは実装していない。以上のメニュー
をメインメニューと呼ぶ。メインメニューでは最大9個の項目を選択できる。
(4) メインメニューでは親指を上げた状態で左右に動かすとメニュー上で反転表示されて
いる3つの項目のグループが指の動きにつれて、左、中部、右の3つの位置に移動す
る。入力したい文字の子音が含まれるように反転部分を移動して親指を下げると反転
表示されている3つの子音のグループが親指を下げた時点で確定し、そのまま親指を
下げたまま左右に動かすと、今度は選択されたグループの中で親指位置に該当する子
音の一つが反転表示される。親指を下げたまま動かして入力したい文字の子音を反転
表示して親指を上げると、その子音が選択されて確定する。
(5) 上記の手続きで子音を確定するとメニューが切り替わり、確定した子音に5つの母音
を組合わせてできる5つの文字がメニュー表示領域に表示される。親指を上げたまま
左に動かすと「あ行」の文字1つが反転表示され、その位置で親指を下げて上げると
反転表示されている文字が選択されて、文章表示領域に表示される。また親指を上げ
たまま中央部に移動すると[い行」「う行」「え行」に対応する3つの文字が1つの
グループとなって反転表示される。ここで親指を下げて下げたまま左右に動かすと3
つの文字の中で親指位置に対応する1つの文字が反転表示され、親指を上げた時点に
反転表示されている文字が選択されて、文章表示領域に表示される。一方、親指を上
げたまま右側に移動すると「お行」の文字が反転表示され、その位置で親指を下げて
上げるとその文字が選択されて文章表示領域に表示される。このように母音指定時の
メニューでは5つの文字が表示され、その内左端と右端の文字は親指先を左端及び右
端で上下運動して選択し、残りの3つの文字は中央部で親指を下げた後で指を下げた
まま左右に移動して上げる地点に応じて選択する。この母音指定時のメニューをサブ
メニューと呼ぶ。
(6) 間違って子音を選択して現れたサブメニューをキャンセルし、メインメニューに復帰
したい時には、サームレストレバーを前方に押せばよい。
(7) サブメニュー「あいうえお」「かきくけこ」「さしすせそ」「たちつてと」「はひふ
へほ」「や ゆ よ」表示時にサームレストレバーを手前に引くとサブメニューが
それぞれ「ぁぃぅぇぉ」「がぎぐげご」「ざじずぜぞ」「だじづでど」「ばびぶべぼ」
「ゃ ゅ ょ」に変わり、これらの文字を入力できるようになる。「だぢづでど」と
「ばびぶべぼ」のサブメニュー表示時に、サームレストレバーを手前に引くとサブメ
ニューがそれぞれ「。 っ、−」と「ぱぴぷぺぽ」に変わって表示され、これらの
文字を入力できるようになる。さらにメインメニューで「わ」を選択するとサブメ
ニューが「わ ん
を」に変わってこれらの文字を選択できるようになる。
(8) メインメニューでサームレストを前方に押して、「英数記」を表示し、中央部で指を下
げて上げて数字モードに移行すると5文字「01234」のサブメニューが現れる。
ここでサームレストレバーを手前に引くとサブメニューが「56789」に変わり、
選択した数字を文章表示部に表示することができる。
□ 動作環境
ワンダースワン
ワンダースワンカラー/スワンクリスタル
WonderWitch 1.0.1
FreyaOS
1.0.2
FreyaBIOS 1.0.0
c/w Meg 1.0.2
□ 更新情報
2003/05/31 Ver.
1.00 を完成。
----------------------------------------------------------------------
入力装置写真解説
入力装置を付加したワンダースワン全体像、右側にキーを持ってくるために本体の上下を逆さにし
て使用した。右側の黒いアームの先端が赤いボール状になっており、このボールの上に親指を乗せ
て親指をスウィング運動する。右側の手前側には白いプラスティック版の上に設置されたサームレ
ストが見える。サームレストは針金で構成し、前後に動かすときに Y1キーとY3キーがON-OFFする
ようにした。
入力装置の各部の名称
親指先をスウィングアームの赤いボール状末端の上に乗せてスウィング運動する様子。親指先は
左側を初期位置として、中央部を経て、右側へと移動している。
親指のスウィング運動を斜め上前方から見た様子。
親指先をスウィング運動して親指先が右側に移動するときにキー X4 が押し下げられる
様子を示す。上左図では X4キーは上がっているが、上右図では X4キーが針金によって
押し下げられていることが分かる。同様に指先が左側に移動するときには X2キーが押し
下げられるので、X2キー、X4キーのON-OFF状況によって指先が左側、中央部、右側のい
ずれの位置にあるか検出できる。
親指先を上下運動して親指先が下がるときにキー X1 が押し下げられる様子を示す。
上左図では X1キーは上がっているが、上右図では X1キーが針金によって押し下げられ
ていることが分かる。上図の機構を用いるとX1キーのON-OFF状況によって指先の上下運
動を検出できる。
----------------------------------------------------------------------
画面スナップショット集
親指を上がった状態で中央部に移動すると画面上部に上左図のようなメニューが表示される。そのまま親指を上げ
たまま右に移動すると上中央図のようなメニューが表示される。親指先を右に移動した後で下げると上右図のメ
ニューが表示される。「ら」が反転表示され、50音の子音「ら」が選択されている状態になる。
さらに親指を下げたまま左に移動すると反転表示される文字の位置も左に移り、今度は「ま」が反転表示されるよ
うになる。ここで親指を上げると選択した子音が「ま」に確定し、メニューは自動的にサブメニューに切り替わり
「ま」に5つの母音を組み合わせてできる「まみむめも」がメニュー表示領域に表示される。このサブメニューに
おいては、親指を上げたまま左に移動すると「ま」が、中央部に移動すると「みむめ」のグループが、そして右に
移動すると「も」が選択されて反転表示される。上中央図の例では、親指を上げたまま中央部に移動して「みむめ」
を反転表示している。ここで親指を下げると「みむめ」の中の一つが反転表示される。そして下げたまま親指を左右
に動かすことで反転表示される文字を変えて「み」「む」「め」の中の1つを反転表示できる。上右図では親指を下
げたまま中央部に移動して「む」を反転表示している。
さらに親指を下げたまま左に移動すると上左図に示すように「む」が反転表示され、そこで親指を上げると「む」が
入力される文字として確定して、上中図に示すように文字表示領域に「む」が表示される。この要領で次々と文字を
入力して文章表示領域に文章を表示できる。上右図は実際に「みんなでわんだーうぃっち。」という文章を入力した
例である。以上の操作は一見複雑に見えるが、実際には親指を左右に移動しながら上下運動するだけで子音と母音を
指定でき、「親指を下げて左右に移動して上げる」運動を2回繰り返すだけで目的の文字を入力できる。感覚的には
親指のスウィング運動をすばやく2回繰り返す度に1文字入力するので負担は少ない。
また数字を入力したい場合には、メインメニューモードにおいて、サームレストレバーを親指の腹で前方に押して上
左図のようなメニューを表示する。ここで上述した要領で「数」を選択し確定すると上中図、上右図に示すようなサブ
メニューが現れ、数字を入力できるようになる。数字入力モードでは、他の文字種を入力するモードに切り替えない
限り、「01234」または「56789」のサブメニューが繰り返し表示されて、数字を連続して入力できる。
「01234」と「56789」のサブメニューは、サームレストレバーを手前に引いて切り替える。数字入力モード
を中止して他の文字を入力するモードに変わりたいときにはサームレストレバーを前方に押す。